24 9月
人生の「壁」「闘い」について、エピソードがあれば、もう一つ教えてください。
実は「バトルロード(前回インタビューに詳細説明あり~シリーズ初の業務用カードゲーム)と、「ドラゴンクエストソード」(任天堂Wii発表時、Wiiと同時発売となることが発表されていた)」と、「ドラゴンクエストIX」(ドラゴンクエストシリーズ本編次回作)の制作が同時進行になったというのが、キツかったかな。(※「ドラゴンクエストソード 仮面の女王と鏡の塔」~Wiiリモコンを剣に見立て使用する体感型冒険RPG。イベント、戦闘にシリーズ初のフルボイス演出を採用)
「バトルロード(2007年6月発売)」と「ソード(2007年7月発売)」は発売日もほとんどいっしょですよね。
こうなる予定じゃなかったんですよね、本当は(笑)。「ドラゴンクエストソード」は、もっと早く出せるはずだったから。もちろん、「ドラゴンクエストVIII」の実績もあったので、この企画を通すのが難しいということはなかった。「Wii発売と同時に出す」っていうコンセプトもしっかりしてたし。ただ、「ドラゴンクエストソード」に必要な技術と、Wiiというハードの特性をすり合わせるのが思いのほか苦労して、その中で制作スケジュールを読みきることができなかった。
逆に「バトルロード」で大変だったのが、やっぱりビジネス的な部分。アーケードゲームでの技術面はタイトーと協力することで目処がたったし、この製品にはすごく優秀なディレクターが付いてくれたので、そのスタッフに自分が思い描くコンセプトを説明すれば、制作をほとんど任せることができた。僕が奔走したのは、社内のネゴシエーションや、ビジネススキーム、キャッシュポイントの確立とかの部分。やっぱり製品自体が新しい試みだったから、今までとは違う部分で苦労した。今やってる「IX」も、ふつうに大変ですよ(笑)。(※「ドラゴンクエストⅨ 星空の守り人」~任天堂DSにて2009年3月発売予定。シリーズ初のマルチプレイ要素を含め、新たな展開が期待される)
技術問題の「ソード」、会社とネゴシエーションの「バトルロード」、そして「Ⅸ」があったと。「Ⅸ」は進行中ですね。楽しみです。
そう。「IX」はしっかりやらないとね。とにかく、期待しているお客さんがたくさんいるから。
ドラゴンクエストでは、開発会社や社内のスタッフはもちろんだけど、堀井雄二さん(ゲームデザイン担当)、鳥山明さん(キャラクターデザイン担当)、すぎやまこういちさん(音楽担当)という3人が制作のカギを握っている。今、堀井さんのシナリオの進行状況はどうか、鳥山明さんのデザインはどこまで進んでいるか、すぎやまさんの楽曲は何曲完成しているか、そして、それを組み込む開発会社の開発状況はどうなのか、それを全部把握して、こっちが動いたらこっちがこうなるとか、すべてを判断して動きをつなげていくのが僕の仕事なんです。
だから、プロデューサーというのは気が抜けませんよ。自分が止まったら、プロジェクト自体が止まってしまうんじゃないか、っていう恐怖感もある。でも、だからこそやってるんです。
それでも、止まる時もある。
そりゃありますよ。こっちは動きたいのに、あっちは動いてない、とか、そういう状況は。でもそれは、どんなプロジェクトでも、どんな仕事でもいっしょなんですよ。ただ、「自分は止まらない」。それだけですよ。
今日は同世代の勇気になるお話をありがとう。でも、一所懸命がんばっても、どうしても壁にぶち当たることがある。全部がうまくなんていかないですよね。
いかないでしょうね。
でも、ぶち当った時、「市村龍太郎」がどうその「壁」を乗り越えようとするのか。最後に教えてください。
僕の本質は、「ひとをおもしろがらせたい」。本当にその一点ですよ。その表現方法が「ゲーム」なんです、今の自分にとっては。ゲームを使って「これおもしろいでしょ」っていうことをしたいんです。だから、企画を立ち上げるときにいつもイメージしているのは、「初心」です。これはずっとコンセプトとして持っておこうと思ってる。
壁にぶち当たった時って、たいがい、「初心」がとっ散らかっているんだと思うんですよね。いろんな方面からのプレッシャーとか、いろんな事情があって。それを避けようとして、遠回りをしたりだとか、まったくあさっての方向を向いたりしてるんですよ、きっと。だから、
「初心はここ!」「最初に決めた着地点はここ!」
って、なんども自分に言い聞かせる。プロジェクト全体も、そして自分自身も、迷ったら「もう1回『初心』に戻ってきて、そこから先を見る!」。これを徹底するようにしてます。それって誰でも、どんな仕事でも一緒だと思うんですよ。自分が何でこの会社に入りたいと思ったんだっけ、とか、1回戻ると、結構見えてくるんですよ。「過去の自分という第三者視点」に戻ることで、自分の今の位置が見えてくるはずなんです。
僕はいつだって必ず、戻りますよ。
だから逆に、自分に対立するのはいつも、「一番最初の自分」。夢を見てたあの頃の、「純粋な」考え、アイデアが、一番「おもしろかったはず」だから。
壁にぶち当たったら、過去の「夢見てた頃の自分」に戻るんですね。
そう。自分を見るときはいつも「戻る」。ただプロジェクト全体は、「自分だけ」じゃないから、もっと全体を俯瞰で見るようにもしてますが。
プロジェクトが「壁」にぶち当たった場合ですね。
プロデューサーのまわりにあるのは、「会社」と、「開発スタッフ」と、そして「お客さん」なんです。この3つのバランスを、いつも必ず見るように意識する。会社に対してはやっぱり「利益を上げる」ようにしなきゃならない。スケジュールももちろん、守らなきゃいけない。そしてスタッフの人たちには、気持ちよく仕事をしてもらわなきゃダメ。彼らが「面白い」って思えるような仕事をさせてあげないと、おもしろいものはできないから。そしてお客さんには、ゲームを買った時に、「これはおもしろい!」って思ってもらえなきゃダメなんです。
この3つのバランスがとれなきゃ、プロジェクトとしては失敗だ。 僕は全員に、それを意識してもらうようにしてます。ただそれでも、壁にぶち当たるんですけどね。必ず、どこかに迷いが生じるんですよ。やっぱり会社の中にいるから、会社にばかり意識が行きがちになる。「予算内に!」とか、「スケジュールを守って!」とか、プレッシャーを相当感じますよ。「会社」は自分の背後にピタッと立ってるんで(笑)。でも会社ばかり見てると、今度はスタッフが「もうやってらんない!オレは勝手にやるぜ!」なんて暴走しそうになることもある。そうすると、一番大切なはずの「お客さん」が見えなくなってくるんですよ、どんどん。
でも本当はそれが一番怖いことなんで、僕はお客さんを一番大切にするんです。もうとにかく「お客さん!」。「お客さん!お客さんだからね!」っていろんな人に言う。
言うと自分でもそう見えてくるというのもあります。言うだけでもね。
やっぱりお客さんが一番見えにくくなるんですよ。隣にいるわけでもないし、買った先の、家の中まで見えるわけでもないから。一番見えないからこそ、一番意識するんです。想像するんです。
だって、お客さんが買ってくれなきゃ、我々がやってることは、意味がないんですから。
そうですね、お客さんですね。
だから「ゲームショウ」っていうのが、僕にとってすごく大事なんですよ。数少ない、お客さんと触れ合える場所なんで。だから、僕は必ず行ってます。必ず行って、お客さんを見るんですよ。お客さんに、会うために、行くんです。
ありがとうございます。なんだかまとめてもらっちゃいました(笑)。
「お客さん!とにかくお客さん!」ですね!ありがとうございました!
※「ドラゴンクエスト モンスターバトルロードⅡ」は、12月より、全国有名デパートやショッピングセンター、アミューズメントスポットなどで順次稼動予定です!