「ぼくらの夢のかなえかた」:アニメーション監督、アニメーター・なかむらたかし(後編)

インタビューの前編、なかむらさんと木村さんからは、今の若い世代のアニメーターに対して、「CGの時代に、モチベーションはどこにあるのか(なかむら)」「情熱的な奴がいない(木村)」といった苦言? も飛び出しました。
──今の若い世代も、頑張ってモノを作りたいという気持ちは一緒だと思います。
- 木村
- 今はCGがあるから、作画の力量の見せ方がわかりにくい。
- なかむら
- 昔は、特にTVアニメは、アニメーターが演出意図を多少は無視しても自由にできた。
でも、俺は宮崎(駿)さんの「未来少年コナン」辺りから、そのカットに必要な無駄のない情報と動きが作品である以上、当たり前だと言う気分になった。
でも反面、純粋にアニメートだけを考えればフラストレーションがたまる。
でも、自分が監督をするときには、やっぱり自由奔放すぎるのは許せない。矛盾しますね。(笑)
- 木村
- それは、たかしさんが監督してわかるようになったことでしょ?
- なかむら
- 監督がいて、その意図した演出があって、作画や美術がある。
- 木村
- でも、監督の指示が出てたのは昔も一緒。
ただあの頃は、監督の指示プラス面白いように見せてあげよう、っていうアニメーターの意志は確かにあった。作品は、演出プランだけでは完成しない。

- なかむら
- あと、今のアニメーションって……見てて面白いのか?って思う事がある。
アニメーションの主なターゲットの、基本は今も昔も小中学生。
でも、少子化で見る人数が減っただけじゃなく、自分がだんだん歳をとって、どういう物語を作ったらいいのか、本当にわかりづらくなってきた。
今のアニメーションは、自分が子供の頃に見ていたモノとは、大きくかけ離れちゃって。
時代が変わったんだから当たり前と言えば、それまでだけど。
技術はデジタル化した、表現幅も広がった。
でも、そうであるのに、物語が広がったように見えない。昔のモノの方が心があるように感じる。
- 木村
- それが「歳」ってことなんだと思う。
宮崎(駿)さんも「崖の上のポニョ」を作っても、結局子供向けにはできなかった。
年齢を重ねていくと子どもっぽいものがなかなか作れない。
作れる回数が減っていくとなると、何か残そうとか思う。
自分の中で厳選しちゃって、考える時間のほうが長くなる。
- なかむら
- 最近あんまり面白くないんだよなあ
- 木村
- それはたかしさんは昔から、商業アニメに染まりたくない人だから。
- なかむら
- いや、人の感情をゆさぶりたいとか、そういうのは強いよ。
ドラマがあって、感情が震えて、そういうのが商業アニメだから。
- 木村
- でも、たかしさんが最近作った作品は、子供に見せるアニメとしては面白いけれど、商業アニメは商品を売ったりとか、もっとあざとい。
そのへんが、細田守さん(*3)は上手い。
*3:細田守──アニメーター。アニメーション監督。東映動画(現東映アニメーション)を経てフリー。監督作品に「時をかける少女」「サマーウォーズ」
- なかむら
- あの人は職人のような上手さは、ある。
- 木村
- それをみんなが好きなんだ。
じゃないとあんなふうには評価されないわけだし。
- なかむら
- 俺は庵野(秀明 *4)のほうが好きだけどね。(笑)
*4:庵野秀明──アニメーター、映画監督。監督としての代表作に「新世紀エヴァンゲリオン」アニメーターとしての仕事に「風の谷のナウシカ」の巨神兵の登場シーンがある。
──アニメ少年だった僕が「なかむらたかし」という描き手を意識し始めた頃、子供心にも「この人の絵はメジャーな“売れ線”じゃないな、何かが違うな」といった雰囲気を感じていました。

- なかむら
- 昔は、これが売れるかというより、実写でいうところのキャスティングみたいな気分で描いてたんですよ。
この女優を出した方が売れる、でも、俺はこっち女優の方が好きだ、みたいな(笑)
でも、お金を集めて、作品として世の中に出すときには、もっと色々考えなきゃいけないのかもしれない。
- 木村
- 売るための方法論はあるからね。
- なかむら
- まあ、売るためと言うより、物語を伝える為の努力は100%してるんだけどね。
──木村さんは、現在は美術だけではなく、アニメーション監督もされていますが、木村さんの絵はカリカチュアライズが効いているというか、じつに“絵的”な感じがします。
- 木村
- アニメーション自体が好きじゃないからね(笑)
極端に言うと、セルアニメは大嫌いに近いくらい。
- なかむら
- 美術描く人だから動かすこと考えてない(笑)
- 木村
- アニメーションっていうのはセル画があって、色の構成でキャラクターがはっきり分かれてる。でも僕には、そういう感覚が無かった。
- なかむら
- セルアニメっていうのは、絵自体には魅力無いよね。よくあるアニメ絵本とかフィルムコミックみたいなのって、わからない。あれ、「作品以前」だもの。
セル画っていうのは、音と一緒に動いて、空間が出て、初めて生きてくる。

──とはいえ、なかむらさんや、木村さんの手がけたアニメーションに憧れて、この世界を目指す人はこれからも多いと思います。

- なかむら
- でも、昔俺が持ってた情熱を、今の人たちは持てるのかな。
昔は岩や炎を動かすことに、たしかな魅力があった。
でも、CGの方がキレイってなった今、じゃあアニメーターの仕事って何?
今後5年、10年で、顔もデジタルで3Dで作り込めるようになったら、
アニメーターっていうか、オペレーターの仕事って何? 昔とはまったく気分が違う。
作家的な手描きアニメは残るとは思うけど。
そうしたら、若い連中が鉛筆持ってやって来なくなるかもしれない。
- 木村
- もうかなり鉛筆を持たなくなってる。
- なかむら
- 国をあげてジャパニメーションを海外に売ろうとかやってるけど。
- 木村
- それは国が遅かった。
もっと前にそういう発想で動いていれば、輸出できる商品になっていたかもしれないけど。
- なかむら
- 日本風土に根ざした、つまり雑誌漫画に根ざしたアニメーションがダメになってるってことは無いと思う。
売れなくなったとはいえ、雑誌漫画自体はがんばってるし。
アニメーターの事を心配してるのか、アニメーションを気にしてるのか、よく判らないけど、
まあ、時代はデジタルで、手描きから離れて行くだろうね。
- 木村
- その可能性はかなりある。
でも、それは手描きじゃなくていいんじゃないの、って事も出てくる。
デジタルでも、「こいつスゲえな」って上手い奴がでてこないとダメなんだけど、鉛筆で描かなくなったせいで、やっぱり描けなくなってきてますよね。
──そんな難しい時代に、この世界を目指す若い人たちに、“夢のかなえかた”としてのメッセージをお願いします。

- なかむら
- ひたむきにやるしかないよね、好きなことをみつけてね。
- 木村
- この世界に入った頃は、絵を描くだけで楽しかった。
あの頃は次の日会社に来ることが嫌じゃなかった。泊りになったりしても。
- なかむら
- 他のものはいらなかった。非常にシンプルだった。机に向かって描くことが苦にならなかった。素朴だったんですよ。
- 木村
- そういう若い人は今もいると思うけど、でも、世の中がそういう人を求めていない。
でも、たかしさんは「なかむらたかし」に憧れて、この世界に入ってくる人たちに、もっと自分のすごい部分が見えるようなことをしていかないといけないと思う。
たかしさんは家で仕事するんじゃなくて、もっと人に“まみれて”ほしい。
- なかむら
- アニメの会社の中にひたっているとね、なにか安心しちゃうとこがあるよ
自分が求めてやってる仕事ならいいけど、つきあいとかいろんな状況で頼まれた仕事で、安心しちゃっていいのかな、って。
- 木村
- でも、人と人との繋がりっていうか、あそこにこういう人がいるよ、みたいな情報は、人数がいるところだと全然違う。使わないともったいない。
何より、若い人にはたかしさんがいたら、影響も大きいと思う
「バニパル──(前編参照)」を一緒にやったとき、「これじゃ駄目」とか色々言われたりするのが新鮮だった。
一緒にやることによって幅が広がるんだな、制作会社のほうが面白いんだなと思ったし。
だから、たかしさんが「交わりたくない」っていうのもわかるけど、それが残念だなって。
- なかむら
- 人と交わりたくないわけじゃないよ。
そういうチャンスがあればいくらでも。
あと、俺が経験したことや、仕事のやり方は、そこにある情熱がなければ成立しない。
今のデジタルとか、ポリゴンとか、その中でどういうモチベーションを見つけていけばいいのか、俺にもわからない。
デジタルの大きな流れの中でさ、俺だって迷ってるんだよ。
それは、やっぱり自分の目で探すしか無いよね。もう一つ言えば、
アニメーターはずっと動きを模索する作業だけど、これからは同時にどんな物語を
語れるのか、見つけ出さなきゃならない。それが問題だね。
今回は、貴重なお話をありがとうございました。
次回の、魂の友情インタビューリレー「ぼくらの夢のかなえかた」も、お楽しみに!
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