「ぼくらの夢のかなえかた」:アニメーション監督、アニメーター・なかむらたかし(前編)

なかむらさんは「AKIRA(1988年)」の作画監督、木村さんは「STEAMBOY(2004年)」の美術監督ということで、お二人には“大友克洋作品”という共通のキーワードがありますが、そもそもの出会いはいつ頃だったのでしょう。
- なかむら
- 20年は経ってないと思うけど、当時トライアングルスタッフ(以下、トラスタ)って制作会社があって、そこで「とつぜん!ネコの国 バニパルウィット(1995年)」って75分の短編の児童映画を作ることになって。初めての本格的な監督作品です。それで誰かに美術をたのめないか、ってことになったときに、トラスタの知り合いが、木村くんを紹介してくれた。
- 木村
- でも、一緒にやったのはそれ一本だけ(笑)
──お二人の友情は、その作品から。
- なかむら
- 友情って言ってもそのあとは一緒にやってない(笑)
あ、「HARELUYA II BØY(1997年:TVアニメ) 」とか、今川の「鉄人28号」のオープニングアニメとかはやってもらってるけど。
- 木村
- そのあと同じ荻窪で別の会社で仕事をしてたんだけど、たかしさんはそのあとの映画(「パルムの樹(2002年:劇場作品)」)が始まって、僕は大友さんの「STEAMBOY」をやってて、仕事的にはタイミングが合わなかったりで。
──お二人がご一緒にお仕事をされた「バニパルウィット」では、木村さんは美術監督。

- なかむら
- 木村くんはすごいんですよ。普通は美術監督がいて、スタッフがいて、って仕事するじゃないですか。
75分の作品なんだけど、それを全部一人でやっちゃった。美術を全部一人でって作品は見たこと無いよ(笑)
- 木村
- そのころ、前の仕事で仕事場を一人で借りてたので、スタッフのツテとかなかったので。予算が低かったっていうのもあるけど(笑)
- なかむら
- あの作品の美術はすごいですよ、美しくて。
もともと子供向けだから、カラフルなアニメーションを作りたかった。
人間がネコの国に行ってしまう話なんだけど、そのネコの国がカラフル。
- 木村
- 色の話になると、たかしさんの家がモデル。
家を赤くしてくれって言うんだけど、赤い家なんて無いだろうと思ったら、たかしさんの家が赤かった(笑)
木村さんにとっては、そんな大先輩からお声がかかった。

- 木村
- そうですね、たかしさんは「AKIRA」の作画監督とかやってたし、有名で。
面識は無かったし、作画のことはわからなかったけれど、タツノコプロ系とかずいぶんやってらしたので。
・アニメーターなら“動かしたい!
──タツノコ作品というと、なかむらさんのお仕事では、「黄金戦士ゴールドライタン(1981年:TVアニメ)」や「未来警察ウラシマン(1983年:同)」といった作品での、特徴のある動きが知られています。
- なかむら
- 特にアクションへのこだわりがあったというわけでもなくて、あの当時のアニメーターなら誰でも、日常芝居よりは壊れたり、激しいアクションにエネルギーを注ぎたがってたんじゃないかな
- 木村
- そうだね。今はCGがあるけど、当時は描けば全部映ったものね。
- なかむら
- 金田伊功さん(*1)に代表されるアクションとか、大塚康生さん(*2)のような“表現する”アクション。もちろんそういう方向に宮崎駿さんも入ってるし、あの頃は沢山の、所謂〈うまい〉と言うアニメーターが居て、そういうのに憧れているから、自ずと意識が行く。
一つの例えでも、巨大な岩を壊していくっていうのを、小さなTVフレームの中で入れこんでやるというのは、「燃える」んですよ。のどかな時代だったというのか。
*1:金田伊功──アニメーター。東映やサンライズのロボットアニメの独特な作画で“金田パース”“金田びかり”といった独自のアクションを確立。
*2:大塚康生──アニメーター。宮崎駿と共に「太陽の王子 ホルスの大冒険(1968年:劇場作品)」「ルパン三世(1971~2007年)」「未来少年コナン(1978年)」などを手がける。コミカルな作画は“大塚アクション”と呼ばれる。
──CGの時代になって、そうしたやり方が変わった。

- 木村
- 今は作画の人に、いろんなことに苦手意識があって「それはCGでいいんじゃない」ってことになっちゃう。すごく描きたくて、めちゃくちゃ動かしたいっていうのは、たかしさんたちの世代くらいじゃないかな。
50歳くらいっていうか、AKIRA世代がみんなそう。みんな頭悪いんじゃないかってくらい、ものすごく動かしたいって欲求があるんだよね。
- なかむら
- それはね、みんな「わんぱく王子の大蛇退治(1963年)」「太陽の王子ホルスの大冒険」みたいな作品を子供の頃にワクワクしながら見て、「動かしてみたい」って欲求があったから。それに、手触り感の中から、動きを造り出す魅力だな。
今のCG世代のアニメーターって、何が楽しくてアニメをやるんだろうって聞いてみたいけれど・・・。
- 木村
- アニメートしてないもんね。
- なかむら
- 最近の仕事って「このへんはデジタルでやっちゃうから、ここだけ描いといてください」って打ち合わせをするっていうから、そういうのって面白いのかな? って思うね。
- 木村
- 背景やってても思うけど、手で描かないから、それもやっぱり面白いかどうかわからない。
なかむらさんの作画だと、岩が砕け散る動きといったところに特徴があるわけですけれど、CGだとそういうことも簡単にできてしまう?
- なかむら
- 今はそういうのもできちゃうでしょう。ハリウッドとかじゃないけど。
大きさとか重さとかのデータを入れたら、みたいな。
- 木村
- いやいやなかなかそこまではできない。
できるにしても、最初にデータをひとつ作らなきゃいけなくて、それがなかなか大変。
しかも、デジタルだといいかんじに壊れない。
こいつをこっちに飛ばしてくれよ、みたいなことはまだまだ難しい。
それを例えば監督をやってるなかむらさんに見せたときに「こうじゃねえだろ」ってことになっちゃう。
- なかむら
- サイズによって、アングルによって、ハーモニーって処理(背景とセルを組み合わせる)も使ってます。
足だけ動いてる、みたいなところもあったりで。いかにも全体が動いているように工夫して見せてる。勿論、監督の指示があってだけれど。
- 木村
- CGが無いので、撮影さんも工夫しているやってることで、描くだけじゃない力がありますよね。

──やはりCGには是非の問題もある。
- なかむら
- でも昔の「宇宙戦艦ヤマト」でも、手描きだからヤマトがグチャグチャになりながらぐーっと飛んでくる。
今はきれいに飛んでくるわけじゃないですか。
そうすると、ああいうのはデジタルでやった方がきれいだな、って思う。
- 木村
- でも、CGにこだわろうって人が参加したらちゃんとしたものになるけど、「このくらいでいい」って人にやらせたら、ロクなものにならない。
銀河鉄道999の汽車なんて3DCGで作っても何にも面白くない。
CGを使うことの良し悪しはやっぱりありますよ。
- なかむら
- でもアニメーターとしては、グジャグジャ動くよりはすーっと動いてくれる方がいい(笑)
大変なんですよ、メカを手描きでずっと描く、パースも狂わないようにきれいに描くっていうのは。
- 木村
- 「AKIRA」のときに壁のパースが変わるところがあって、ああいう単純なものほどうまくいかない。
- なかむら
- あれ手描きで全部やったんだよね。あのころ3Dはなかったし。
- 木村
- まるっきり無い。
「AKIRA」は、さっき言ったような“描きたい人”が悶々としている時期の作品だったから、みんなおかしいぐらいにがんばっちゃった。
なかなかあんなのやらせてくれない。
──CGの時代の今、そういう“描きたい”人はどうしたらいいでしょうか。
- なかむら
- 逆に聞きたい。
昔のアニメーターのモチベーションと、今のアニメーターの気持ちの持っていきかたの違いを。
- 木村
- 今は、冷めてないとかっこわるいみたいなところがあって、情熱的な奴は少ないですよね。
次回、魂のインタビューリレー「ぼくらの夢のかなえかた」:アニメーション監督、アニメーター・なかむらたかしさん(後編)「デジタル化の流れ──「俺だって迷ってるんだよ」へと続きます~
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