「ぼくらの夢のかなえかた」:YAMATO WORKS・森田修平監督(後編)

あの「FREEDOM」の第1話の勢いは、現場のギリギリ感から来てるんですね!?
- 森田
- 今だから言えるんですが、外注してたものが思ったように上がらず、アフレコも終えて音響も入ってるのに100カット近くが観られたものじゃない状態だった時があったんですよ。残り4日くらいしかない中で。そのとき、僕が手を挙げて「せめて50カットでいいからつくり直したい」って言ったんですよね。たぶん、会社側は、もう、これで成立したものだという判断だったと思います。だけど、ウラではスタッフも「やってやろうじゃないの」という感じになって。実際、
98カットやり直せたんです。
- 水崎
- ワースト98を潰していったんだ。
- 森田
- 演出さんからいうと、それ、NGですよね。そんなもん新しく作ったら、音全部ズレるんじゃないの?って。でも、それも受け入れてくれて、実際、音も全部あわせてくれた。とんでもないことをしてましたね。
- 水崎
- 会社の方針だったら「よし!これいいんじゃない!題名が『FREEDOM』なんだし」なんてこともあり得そうだけどね(笑)。
その辺りは、水崎さんが前回の対談でおっしゃっていた「妥協は死」という信条が、森田さんにも受け継がれているように感じます。
- 森田
- 確かに、それはあると思います。例え良い作品ができても終わってみると「もう少しできたんじゃないか」とか考えちゃいますしね。そういう意味では終わりがない。でも、それがきっと次の作品につながるんだろうなって。それと、僕自身、アニメ業界の人間じゃないと感じていて……つまり、アニメ業界で演出や作画をやった経験はそれほどないので、それが逆に「なんとかしよう」「必ずできる」という気持ちを起こさせるのかもしれません。神風動画にいたころ、一番最初に作った「MARS BRAT」も、水崎さんから「森田君、やってみない?」って、ポンと渡されて「やりたいです」って受けたわけですが、いま考えたら無謀ですよね。画コンテも描いたことないのに「やりたい」なんて。でも、そういうところからスタートしてるので、どこかで「必ずできる」とは思ってるんです。

前作「FREEDOM」でも、そうした独自の工夫や新しい手法はあったのでしょうか?
- 水崎
- 「できない」と思わずに、ひとつひとつ作品を作っていくのは大事だよね。かつて試行錯誤して作ったサンプルが、少しずつ形になって、コンテストに受かって、それがもとで「MARS BRAT」のオファーが来る。それを観た人が「カクレンボ」を作りたいと言ってくれて、「カクレンボ」を観た人が「FREEDOM」を……と、わらしべ長者の話みたいにワラがどんどん変わっていく。いつかそのワラが家になればいいなと。
- 森田
- その中で、僕にとって一番大きなきっかけになったのが「カクレンボ」ですね。あれは「YAMATO WORKS」として独立して、2〜3人で作った作品なんです。
えっ、そんなに少ない人数で?
- 水崎
- もともと「神風動画でオリジナルを作ってくれないか」と言われてたんですけど、僕は森田君のオリジナル制作の熱望を知ってたので「森田君、作ってみる?」って。神風動画が企画で、森田君にすべてを委ねたのが始まりだったんです。 けど、いつの間にかウチの名前がクレジットから消えてたんだよね(笑)。
- 森田
- ちょっとした賭けだったんですが、長編作品をやりたかったんですよね。それまで神風動画でも毎回ショートを作ってて、ショートの中にも一応ストーリーは考えてるんですけど……
- 水崎
- ショートだとウラ設定までになっちゃうからね。
- 森田
- そうそう、それはそれで楽しいんだけど、ちゃんとお客さんが観て分かるストーリーにしたかった。でも、それってアニメ業界で演出やってないと、なかなか機会が得られないんですよね。じゃあ、1人や2人で作っちゃおうと。そんな話を周囲にしていたら、コミックスウェーブさんから話をいただいて。いま振り返ると地獄のような大変さでしたけどね(笑)。実際やってみると、やりたいことがいっぱいありすぎて……世界観とか、自分の好きなものが全部出てしまってキレイに収まりきってなかったと思います。
- 水崎
- でも「カクレンボ」の大変な経験があったから「FREEDOM」も乗り切れたんじゃないかな。
- 森田
- ええ。人間って、面白いですよね。本当の地獄って、記憶から消しちゃうんですよ(笑)。ホント、ツラかった記憶がない。もちろん、机で気絶するように寝てたとか、そういう印象はありますが、ほぼ毎日がそうだったので。ただ、そのとき、1つだけ思っていたことがあるんですよ。「オレ、ひょっとしたら世界で10番に入るくらい頑張ってるかも」って(笑)。
- 水崎
- それは相当頑張ってたんだよ。
- 森田
- あと、夢の中でつくってることもありました。
- 水崎
- それはあるよね。マスク置いて、調整レイヤー置いて、セル置いて「できた!」と思ったら夢だった、みたいな。
- 森田
- 起きたとき愕然としますよね。ただ、そのおかげで「あ、そうすればいいんだ!」って、やり方が分かったりするんです。
- 水崎
- そうそう、夢の中でもリハーサルはできてるんだよね。
次の作品で「こういうことをやりたい」というのは、すでにあるんですか?
- 森田
- めちゃくちゃありますよ。あらゆる種類のものが。ただ、具体的なところは、こういう場で話しちゃうと、つくった気になっちゃうんですよね。
- 水崎
- それ、いつも言ってるよね。次のアイデアを人に説明すると、できた気になっちゃうって。
- 森田
- 部分部分は話したりしますけど、現場で変わることもありますしね。作品って、第1歩が重要で、1歩進むと、その先なんてものは、進んだ以上、考えないといけない。そしていろいろな試行錯誤があって作品ができていくんです。先に進んだ後のことまで見ちゃうと「これを作るためには」という要素があまりに多くなってしまう。それはあえて溜めておいて、まず現場に入ってから考える方が好きなんですよ。でも、プロデューサーに言わせると、僕は「話がコロコロ変わる」って。僕からしたら変わってないんですけど……なんでしょうね、あれ(笑)。
- 水崎
- 話した「部分」が変わるからなんだろうね。森田君の考えてる「ライン」は変わってないんだけど。

今後、次世代のアニメや映像、CGの未来や役割という点では、森田監督は、どんなことを考えていますか?
-
- 森田
- そこに関して言うと、「FREEDOM」を作ったとき、大友さんは「今まで作画で100のものを作ったけど、この先130、140というものを作るためにCGを入れてやりたい」と言ってました。ただ、そのことに1つ疑問も出てきたんです。100から140に上げられるスタッフは、ゼロから100にする方法を知らない。作画さんが積み重ねてきたものを知らない人たちがCGを使っても140にはならないんじゃないかと。それで僕は、初期の目標を「100のうちの『ゼロから80をつくる』」にしたんです。まず、本当のアニメの面白さとか気持ちよさ、動きやアングルのカッコ良さを作るためにやってみようと。もちろん大友さんに言わせれば「なんでそんな今までと同じようなことをするんだよ」という話なんだけど、それができれば、次もいろいろなことができると思った。今後、アニメや映像の世界には、3Dシアターや3D的な演出、さまざまな可能性があるでしょうけど、まずは基本を知っておかないと。
- 水崎
- やはり、新しいテーブルを作ったことは大きかったんじゃないかな。森田君の描く理想のアニメーション像に近いものを作るためにも。
-
- 森田
- よく水崎さんの言う「ゼロから1にするのが難しい」という作業。それが「FREEDOM」ではできたんじゃないかと思います。これからも同じスタッフでやるにせよ、その「1」をどこまできちんとつくり込めるか。それがいろいろな可能性に繋がるのは、楽しいことですよね。
最後に、このインタビューの1つのテーマでもあるのですが、今の日本の経済状況や雇用状況が悪かったりする中で頑張っている人たちへ、とくに業界をめざしている若い世代へのメッセージをお伺いしたいのですが。
- 森田
- 頑張っていることは人それぞれあると思うんですが、それよりも、自分が生きるために、どう考えるか。思考停止にならないことが大事だと思うんですよ。その結果、貧乏したりってことは、僕は全くかまわないと思うんですよね。好きなことができていれば、お金も場所も関係ないと思う。いま、世の中見渡すと「こうなるためには?」みたいなhow to情報がいっぱいありますが、ああいうのは、あらゆるものを端折って書いてるだけで、結果論なんですよ。僕は、そんな成功例通りにやって上手くいくなんて思えませんし、そういうのを読むと「こうなりたいな」と思ってても「オレ、条件外れてるから、なれないわ」って考えがちになることだってありますよね。そんなことより、必死に自分の中で考えて、ときには腹も立てて、また考えて……その結果が、たとえ思ってた形と違っても、考えている限りは、自分のやりたいことができてると思うんです。机の上だけじゃなく、プライベートでも、つねにいろいろな可能性を考えていれば、必ず道は拓けますから。
- 水崎
- うん、業界をめざすにしても、単にCGクリエーターを終着点に考えちゃダメだと思うんだよね。もっと先に見据えるものがあって、その過程だったらいいと思うんだけど。
- 森田
- 以前、水崎さんは「いつか議員に立候補する」って言ってましたよね。街宣カーに自分の映像流すって(笑)。
- 水崎
- 今も思ってますよ。この先の僕の予定は12くらいあって、立候補はそのうちの8の段階。今は5と6の間、PV監督と映画監督の間くらいかな。最終目標は「アメリカに勝つ」ことですね、社名がちょっと問題ですが(笑)。だってアメリカに勝てるのってアニメーションくらいでしょ。
- 森田
- それはそうですね。僕は、個人的には「FREEDOM」以降、作品を作ってない自分自身に腹を立てたりしてましたが、でも、ふてくされずに、いつも考えてます。最近、やっと1本企画が決まって、今、自分で脚本書いてるところなんですよ。
それは楽しみですね! いつごろ公開予定なんですか?
- 森田
- いつ公開かまだ言えないんですけど、そんなに遠くもないですよ。
- 水崎
- でも、今あまり話すと、つくらなくなっちゃうね(笑)。
では、次回の対談は、ぜひ、そのお話が聞けるタイミングでお願いしたいですね!今回は、貴重なお話をありがとうございました。
次回も魂の友情インタビューリレー「ぼくらの夢のかなえかた」お楽しみに!
One Response for "森田修平の「思考し続ける」作品づくり。"
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