「ぼくらの夢のかなえかた」:有限会社神風動画 代表水崎淳平さん(後編)
大手ゲーム会社を経て、スタジオ4 ゜Cから独立後、少数精鋭のアニメーション制作集団「神風動画」を設立した水崎淳平さん。松本大洋原作「ナンバーファイブ」のアニメーションや、安室奈美恵さんの新曲「Dr.」のPV、そして7月11日に発売された「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」(スクウェア・エニックス)で壮大な世界観を創り上げた水崎さんの語る「映像の未来」とは? 第一回に続き、市村龍太郎×水崎淳平の対談でお送りします。

いろいろすごいお話をお聞きしましたが、今後の神風動画の向かう先とは?
- 水崎
- 僕は、向かっていく先が見えてはダメだと思ってるんです。分かりやすく言うと、いま、映像とかアニメーションの世界という舗装された道があって、その先にはおそらく、ディズニーであるとか、手塚治虫さんという存在があると思うんですよね。みな、その舗装された道の上を通ってみたり、脇道を作る人もいる。僕の場合、山にトンネル掘ってる状態なのかもしれません(笑)。山掘っているうちにガチガチの岩に当たったり、崩壊するかもしれないけど、その山を抜けた先に、どんな風景があるのかなって、いまだにそう思って進んでいる状態です。分かっている道に行くよりは、よくわからないところを掘って、最後に山の反対側に見える風景というのを楽しみにしているんです。
今のアニメーション業界では、水崎さんのような作り方が定番になっているんですか?
- 水崎
- いま増えてきましたね。昔は、自分たちだけでしたけど、「こんなやり方が浸透すればいいね」くらいには思ってて、あえてクローズドにせず、技術はオープンに、雑誌で記事を書いたりセミナーをやったりしてました。意外と大手のプロダクションさんがセミナー聞きに来てたりしてたんですよ。
- 市村
- それもすごいですよね。
- 水崎
- もちろん、体力のある大きなプロダクションなんかは、一気にウチなんか追い越していける。それでもいいかなと思ってるのは…たぶん、ビジネス的に、「1を5や6に膨らます」のが上手な方っていっぱいいると思うんですよ。でも「ゼロから1を掘る力」がある人って少ないんじゃないかと。僕は1を5や6にする力ってそんなにないんですけど、ゼロから1を発見する力は持ち合わせている。ゼロにどんな数字をかけてもゼロにしかならないのを1にするという奇跡を起こしているんだから、いいんじゃないかって。
- 市村
- アニメーションって特許取れないんですか? というのは、ロイヤリティ云々というより、僕は「これは紛れもなく水崎淳平が開拓してきた手法だ」という証を残しておいてほしいんですよ。だって、大手がそれをガバッと真似してやっちゃうと「ウチの手法です」って言っちゃうんだもの。
- 水崎
- そう。やってきたことを水崎さんの人生に刻んでいってほしいなと。とくに世界に出ようと思った時こそ、そういうパワーって強いんですよ。「おお、彼がパイオニアか」っていう、すごく分かりやすい指標だったりするんですね。

水崎さんがデジタルで描こうと思った「原点」のようなものは、何かあったんでしょうか?
- 水崎
- アニメーションをやろうと思ったのは「AKIRA」がきっかけだったわけですが、もっと遡れば、小学校5年の頃「つくば博」の富士通パビリオンで、立体映像を見たことじゃないかと思うんです。その立体映像は、たしかポコポコした可愛い動物みたいなキャラクターが飛んで来て、自分の横をすり抜けていくように見えるもので、メガネをかけて見るヤツだった。「何でこう見えるの?」と思って、本でいろいろ調べたんですよね。それは「両眼視差」によるものなんですが…立体的に見えるようにするには「右から見た映像」と「左から見た映像」をデジタルで作るしかないんですけど、その頃って、CGなんてものは「科学者が作るもの」だったんですよね。で、僕が何をやったかというと、右から見た絵と左から見た「ドラえもん」の絵を教科書の隅に手書きで描いて、それをパラパラマンガにして回して、眼を「寄り眼」にして見た。そうしたら、ドラえもんが立体で回って見えたんです。
- 市村
- ええ~っ!? それはすごいな。それで立体が見えるんだ?
- 水崎
- 見えるんですよ。でも寄り眼で見るなんて僕しか知らないから、そのスゴさは誰にも伝わらなくて(笑)。今の時代、右から見た絵と左から見た絵を手描きで描くのは、アニメーターにとって、ただの一作業でしかないわけですが、こういう表現方法でいくと、セルアニメーション的なものが飛び出すことも可能だなと。ただ、そういう媒体がまだないんですけどね。
- 市村
- でも、いま、立体テレビとか、いっぱい出てきてますよ。
- 水崎
- ん、パナソニックさんとかソニーさんとかもいろいろ規格はあるようなんですが、規格が落ち着いてないんですよね。でも、だからこそ、これからようやく自分の手法が活きる時代だと。そこに「神風動画」がデジタルで絵作りをしているメリットがある。今が勝負だと思ってますよ。
- 市村
- それね、今、聞いて本当にビックリした。僕もそこ狙ってるんですよ、立体。実は、バーチャルリアリティ展とかもよく観に行ってるんです。まあ、まだ技術としては、立体に見えても眼が疲れるとか、メガネじゃないと見られないとか、まだだなと思ってるんですけど、自分の中での最終的な目標は、実は「立体の映像と戦えるドラクエ」を作ることだったりするんですよ。
- 水崎
- 市村さんの『剣神』のコンセプトなんかを見ると、まさにそれをやりたいんだろうなって、伝わってきますよね。
- 市村
- そう、すごくやりたいの(笑)。もちろんWiiでもやったけど、テレビの中の世界が出てくることはないんだよね、まだ。でもやっぱり、すぐそばにピョンと現れてきた敵をバッサリと倒してみたいじゃない。
立体映像を演出できる、初のアニメーション監督になりたい。

ゲームにしても映画にしても最終的にはそこですよね。『スターウォーズ』のレイア姫みたいな。
- 水崎
- いま、時代としては、そこの境目を体験できているわけで、しかも、そこにコンテンツを投入できたなら、すごく光栄なことですよね。僕、眼の仕組みとか、脳の構造を、調べてるんですけど、1つ面白いことに気づいたのは…僕は転勤族だったので、大人になってから、子供時代を過ごした場所に20年ぶりに行くようなこともあるんです。すると、街自体がすごく小さく感じるんですよね。昔はコロシアムみたいに走り回っていたのに。それって、視線の高さということもあるんですが、もう1つは、実は両眼の「眼と眼の距離」なんですよ。いま、実際、やってみると分かるんですが、両方のまぶたの端を指でギュっと押して眼球を寄せてみて下さい。そうすると視界がワイドになるんです。
- 市村
- (眼球を寄せてみて)なるほど、両端の方がニュッて広がる。
- 水崎
- それが大人と子供の両眼視差の差分。要は小さい子供には大きく見えるんです。僕が立体映像を作るときは、ただ飛び出すだけじゃなくて、大人と子供の視野の違いも演出したい。つまり、距離感も含めて立体映像をちゃんと演出できる初の監督になりたいんですよ。
- 市村
- 面白いなあ。いろいろ考えてますね。ゲームも今まで発達してきて、その間に何度か「こんな映像ができるんだ」っていう、驚きってあったじゃない?今はそれがないんですよ。絵もリアルになったし、実写映画と大差ないところまで来てる。そこから先がないんですよ。通信機能とか、そういうのはあるんだけど、誰にでも分かりやすい「とんでもない衝撃」がない。しばらく停滞している感じがするの。だから「次は絶対、立体だ」って思ってて。飛び出してる映像と遊べるって、圧倒的なパワーだと思うのね。
- 水崎
- うん、そうなんですよね。
- 市村
- それプラス「触れる」っていう感触ね。剣でズバッとやったときに、何かしらの衝撃がないと。映像に触れた時って、何かしらスゴいことが起こるだろうと思ってる。だから、立体に対してこんなに考えを持っている人が、こんな近くにいるとは思わなかった(笑)。ぜひ、時が来たら水崎さんにその絵を作ってもらいたいですよ。
- 水崎
- いや、もう絶賛売り込み中なんです(笑)。

最後に、不景気で何かと希望を見いだしにくい時代ですが、これから夢を切り開こうとする方たちへのメッセージがありましたら、お願い致します。
- 水崎
- とくにこうした業界をめざされる人に対しては、自分の弱点を見つけてほしいんです。何が弱いのか把握してない人って扱いにくいんですよ。逆に「僕はこれが苦手です」「これが弱いです」という面が分かっている人の方が、仕事のポジショニングを取りやすい。それが高校や大学、専門学校の間に、若い人たちが見つけるべき課題なんじゃないかと思うんです。人間、弱い部分って誰しもあるわけで、そこを周囲の人が守ったり強化していくことで仕事も成り立っていくんだよね。
- 市村
- うん、自分が弱いところを認めるって、たしかに悔しいんだけど「弱いところを含めての自分」を受け入れて、その上で闘っていこうと思える人って、一段、人間として成長しますよね。
- 水崎
- こんなことを言うと壮大すぎるかもしれませんが…、僕らの生きてる環境って、まず、宇宙があって、太陽があって、地球がその周りを回っているという現象があるじゃないですか。そうした現象が起こっていることを認識している人間という存在って極めて珍しいんじゃないかと思うんですよ。自分たちは、それを知ることができただけでも、すごく恵まれてるし、それって十分エンターティンメントじゃないですか。だから、あまり高いハードル掲げすぎたり、投げ出したりせずに、それを最後まで驚きましょう、楽しみましょうって、思うんですよ。僕はいつもそんな姿勢を大事にしています。
今後のご活躍、本当に楽しみですね!
水崎さん、そして、ご紹介いただいた市村さん、熱くて面白いだけでなく、本当に夢のある対談をありがとうございました。
4 Responses for "水崎淳平の「映像の未来」"
[...] ⇒今すぐ「マガジン」ページへGO!!!!!!!!!!!!!!!!!!�… [...]
天才は、凄い!!!
発想、ぶっ飛びですな。。。!!!
[...] ⇒今すぐ「マガジン」ページへGO!!!!!!!!!!!!!!!!!!�… それではみなさん!良い夢と良い週末を! [...]
そーなんです!
インタビュー中にハナヂ出ましたもん!
人生は自由であり、世界は美しい。
それを実感しながら、「変態」でありつづけたいものです。。。
Leave a reply